sunday play#2「ニューデリーの恋人たち」Part4(ネタばれ感想)

この感想は「ニューデリーの恋人たち」と伊坂幸太郎ラッシュライフ」のネタばれを含みます。ご注意ください。
@HEPホール。9/28マチネ(13:00〜)B列(2列目)8番(前売3500円)上演時間2時間10分。客席満席200名程度、立見なし。前作「四月のさかな」DVDを購入。
まず誉めます。とにかく主役の小山茜さん(売込隊ビーム)の佇まい。劇団☆世界一団はとにかく女優が強くて希ノボリコさん(旧:志津間恵子さん)、年清由香さんの2トップが強力。一方で男優が平林さんしかいなく、村田敦司さん(現:Go Go マグネグflowerモモンガ主宰)は抜けるわでえらい貧弱だったのですよ。それが男優は赤星さんという看板、脇役の絶対的存在の小松さんが入って充実。一方女優は希ノボリコさんが抜け、本公演では年清さんが抜けで正直気になっていたんです。宮川サキさんが入ったことは知ってましたが、女小松で絶対に主役じゃないタイプだし。吉陸さんは仕事と二股でやっぱり主役には力不足。そこにぽんと小山さんを引っ張ってきた。売込隊は小山さんのほかに、芝居馬鹿梅本真理恵さんにTVも出られるほどルックスのある三谷恭子さんがいて正直小山さんの評価は三番手だったのですが、この芝居で一気に評価が上がりました。sundayに来てくれないかなあと正直思います。絶対横山さん(売込隊ビーム主宰)でなくウォーリーさんについていくべきだって。とにかくスタイルがよくて、美人で、芝居も上手くて。とにかく3500円の元は小山さんを見ただけで取りました。
あと「四月のさかな」でも感じましたが、元一団勢に関してはアテ書きならではのぴったり感。小松さんの役は小松さんしかできない。平林さんの役は、吉陸さんの役は、赤星さんの役は、井田さんの役は、安元さんの役は、椎原さんの役は・・・以下略。宮川さんももう古くからの一団の役者さんのようで。特筆すべきは一団後期から芝居のダークサイドを担うようになった平林之英さん。この人の悪役というのは本当に上手い。非常に生き生きと悪役を演じます。こういう人ってすごく貴重。
次、演出。常々ウォーリー木下さんには演出の才能に今一歩感があると、言い続けて来ましたが。今回は一団スタイルを進化させたsundayスタイルを実感させました。どうしても惑星ピスタチオのフォロワーとして見てきたわけですよ。でもウォーリーさんはひたすら頑固にピスタチオスタイルを貫き、その一念でピスタチオの壁を打ち破ったように感じました。特に主役二人がひたすらすれ違うマイム。生演奏の違和感ない挿入といった今までやってきたことが開花したのと同時に、途中の小山茜さんが素に戻り、「これからこういう芝居をやるんですけど」と言ったのは、まさしくチェルフィッチュ(東京:若干古いけど)スタイル。こういう新しい試み、グッドです。
で最後に脚本です。常々ウォーリー木下さんの脚本を読み解くキーワードは「運命」と言ってきました。今回も表層は恋愛ものですが、実際は「二人が死に別れるバッドエンド」=運命、「二人が出会うハッピーエンド」=運命への反逆と読み替えると、結局運命に逆らうことは可能かといういつもの命題となります。面白いのはこの二つを安元さんが入った三人組旅行者の一年前と現在という「ものさし」を使いながら、同時進行的に、一方で時間軸をずらしながら語ったもので、5つの話を並行的に語りながら、実際にはすべての話が一日違いであった(つまり五日間の話だった)伊坂幸太郎ラッシュライフ」を彷彿とさせます。ただすれっからしのミステリー読みである私にはヒントが多すぎて逆にこの仕掛けはつまらなかったです。例えば、冒頭のフィフティフィフティという会話とか(この時点でグッドエンドとバッドエンドを用意しているなと勘のよい私は警戒します)、小山さんの服の色とか、あからさま過ぎて。おまけに最後に小山さんが再び素に戻って解説までしてくれます。私の興味は途中から二つの話にどういう折り合いを付けるかに集中しているのですが、ネタバラシをわざわざやった上で、「ニューデリーだからどっちもあるんです」と丁寧に「こう読め」と指示する。正直おせっかいにも程があると思いました。四月のさかなでも感じた(完全に蛇足なネタバラシをエピローグで語る)のですが、関西の観客のレベルを馬鹿にしていませんか>ウォーリーさん。私が勝手にウォーリーさんのライバルと考えている、クロムモリブデン青木秀樹さんは、きちんと結論は観客に委ねる。これが大人ってものではないですかね。
3500円払って年が同じような人の上から目線ほど気色悪いものはありません。これが野田秀樹なら許せるよ。年が上だし、基本的にすごい人だし。でも同年代としては許せないです。昔のウォーリーさんの脚本は今ほど完成度は高くなかったけど、観客を上から目線で見ることはなかった。それでいて私に勇気や生きる指針をくれた。だから私は1998年に「この人の芝居をずっと見ていこう」と思ったんです。それが最後の小山さんの独白であっけなく崩された感じです。この怒りどこに持っていけばいいのでしょうか。
確かに現在の関西の観客のレベルは低いです。でも作り手はその状況を踏まえた芝居を作るなどという妥協をしてはいけません。ウォーリーさんはもう一度原点に返って芝居を作ってほしいと思います。
あと二つの結論をどっちとも取れると結論付けたのは正直残念です。ウォーリーさんは運命論者でそこがぶれないところに魅力があった。この話ならバッドエンドをしっかり見せて、変な小手先の救いは見せなかったはずです。今までまったく揺らぎがなかったものにはじめて揺らぎが出た。これはどういうことなのか。ウォーリーさんに変な迷いが出ているのではないかと懸念しています。
最後にもう一度この劇団の制作に苦情。シナリオリーディングとかPVとかメルマガとか変なオナニーは不要です。もっと宣伝に力を入れてください。もう一度言いますが、えんぺに釣りでもいいので宣伝カキコをするべきです。今の小劇場には内輪へ内輪へという変な循環がありがちです。まさにsundayはその無限循環に片足を突っ込んでいます。とにかくクロムモリブデンのようにやる気のあるメンバーを連れて東京に出てください。役者専業でやっている赤星さん、小松さんあたりが思う存分芝居ができるよう今チャレンジすべきです。ウォーリーさんは今の仲間を非常に大切にしているのは分かりますが、現状を続けることが皆の幸せにつながりますか?ジャブジャブサーキットという劇団をご存知でしょうか。役者の実力もあるし、はせひろいちさんという主宰の能力はすごく高いです。でも今の彼らが芝居を打っている場はウイングフィールドです。sundayもこのままではジャブジャブサーキットになりますよ。愛あるゆえの忠告です。