僕の考える来年以降の電王戦

先週末に今年の電王戦が終わりました。開催前は「去年の三浦ーGPS戦で勝敗という興味でワクワクできる勝負は終わった」と公言して関心ないよー的ムードを醸し出していたのですが、結局今年も結構楽しんでしまいました(去年ほどニコ生にかじりつきでもなく見ていない局もありましたが、ある時間の中ではそこそこ見た印象)。
将棋の内容が鑑賞に堪えうる熱戦が多かったのが一つ、あとは昨年の敗戦を受けてプロ棋士側がそんなに重圧を背負っている感じがなかったのが、よかったかなあと個人的には思っています。

さて来年の電王戦については開催の有無も含めて未定の模様です。(ソフトの選手権である電王トーナメントは開催されることが決定済)。棋士側の陣容の問題、対局ルールの設定の問題等沢山の論点があり、特にタイトルホルダー級の棋士を出すとすれば、既存の棋戦のスポンサーとの調整も必要で、ここで一旦考える時間を取ったというのは悪くない決断だと思います。

逆に言えば今が外野の意見をワイワイ言える時期。ということで僕なりに電王戦終了以降考えて、こうすれば関係者の誰もが損を被ることがないのではないかと思える電王戦のあり方を提示したいと思います。

まず五人対五ソフトの団体戦、年一回開催という枠組みはそのままとします。その上で
(1)対戦棋士の選抜方法を明瞭なものにする
(2)対局条件は複数のオプションを予め用意し、その中から対局棋士が選ぶものとする。
(3)タイトルホルダーの参加はなし。タイトルホルダー対ソフトは電王戦と別枠で考えるものとする。

それぞれについて説明します。
(1)対戦棋士の選抜方法を明瞭なものにする
今回の電王戦の参加棋士については予め希望者を募り、その中から選抜されたと聞きます。基本的にその方法でいいと思いますが、その選抜の過程が明瞭化されることを希望します。
具体的な形で言えば手を挙げた棋士全員参加による予選を行い勝ち上がった人が出るという形が基本でどうでしょう。これならば出場棋士のレベル確保も図れ、またわざわざ予選に参加してまで参加しようという熱意のある棋士が自然と選ばれることになります。この予選の運営はドワンゴ主催でやってもらうと。電王トーナメントのプロ棋士編を別途行うっていうイメージですね。
応用として例えば一枠は前年度獲得賞金最上位者(希望者の中で)を予選免除で自動参加とか、一枠は例えばファンによる投票で選ぶ(希望者の中で)という形もいいのではないでしょうか。

(2)対局条件は複数のオプションを予め用意し、その中から対局棋士が選ぶものとする。
対局条件の設定についてはこれまでの電王戦で色々な試行錯誤がなされ、森下先生のように棋士側からもアイディアが出ている現状です。こういう状況下で人間とソフトの対戦ルールにも多様性があって全然かまわないのじゃないかなというのが僕の意見です。例えばある先生は事前貸し出し全くなしで一発勝負でソフトに打ち勝ってみせると思われてるかもしれないし、森下先生のように人間側のハンデをなしにした形で勝負がしたいと思われる方もいる、一方でアンチコンピューター戦略をばっちり仕込んでソフトを嵌めて勝ってしまおうというのも立派な選択です。こういった棋士が対ソフト戦にあたり戦いたいと考える条件をできる限り尊重し実現してしまおうということです。
(1)に示したような選抜方法で五人の代表が決まったとします。その時点で各々がソフトと戦う条件を指定し、その条件で本番戦うということにします。例えば今回の電王戦の条件である平手、五時間(ストップウオッチ)切れたら一分、ソフト事前貸し出しあり、統一ハードという条件を基本として、オプションとして、駒落ち、時間設定、貸出の有無、クラスタの有無、その他の対局条件(継ぎ盤の使用など)を予め複数用意し棋士が選ぶという形です。(このオプションの具体案についてはニコ生で一度議論をオープンにして討議してみるのも一つの手だと思います)もしある棋士が「俺はソフト相手に駒落として勝つよー。クラスタでもなんでもやってきなさい」って挑発すればその展開わくわくしますよね

(3)タイトルホルダーの参加はなし。タイトルホルダー対ソフトは電王戦と別枠で考えるものとする。
この点については、僕自身も前に行われた渡辺ーBonanzaのような頂上対局を、それも番勝負で見たいと思う気持ちは凄くあります。ただこの実現は電王戦の枠内では扱わなくていいのかなと思います。あくまでも感覚の問題なのですが、電王戦の主催者であるドワンゴには荷が重すぎるというか、ちょっとこの企業はあらゆる意味で未熟すぎて扱ってほしくないという気持ちですね。乗りの良さだけでこの問題は片付きません。やはり然るべき主催者の下、然るべき条件(対局ルール、お金等の条件)をしっかり整え、適切なタイミングで実施されるべきものと考えます。


以上雑駁駄文ですがまあこれを関係者が読んで聞き入れられるわけでもないからと思って勝手に書かせていただきました。もしかしたらプロ棋士側に甘すぎるのではないかというご指摘も受けるかもしれませんが、やぱりプロ棋士の第一の仕事は人間同士の対局で勝ち進み上を目指すということだと思うのですよね。その中で自身の存在価値すら危うくなるかもしれないリスクを背負って、ソフトと戦ってみようという棋士の勇気は最大限評価されて然るべきだと思うのですよね。気丈に振る舞われていた部分もあるかもしれませんが、今回自ら志願し最大限の力を発揮されて敗れた屋敷先生の対局後のさっぱりした笑顔をみて、プロ棋士が自分の納得できる条件でソフトと対局することの大切さを改めて感じ、上記のような提案をしてみた次第です。長文おつきあい頂きありがとうございました。

(補足)森下先生の提案している「継ぎ盤使用」という条件は、僕はこれ認めちゃうと将棋が将棋でない別の競技になってしまい、また対局姿勢も相当美しくないと感じるため、個人的には反対です。その条件採用ばっかりの対局になったら僕は視聴を遠慮すると思いますw